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グリコの「GOOD」で「利口」な「小売」。 [チャネル]

タイトルにシャレを入れてみた。不愉快な思いをされた方がいましたら、申し訳ないっす。ある記事を読んで、正直驚いた。販売手法自体は昔からあるスキームなので、新鮮ではないけど、お菓子をそのスキームに乗せるとは畏れいってしまった。


まずはグリコの企業情報を確認しよう。
◆社名 江崎グリコ株式会社
◆代表取締役社長 江崎 勝久.
◆創業 大正11年2月11日.
◆設立 昭和4年2月.
◆事業内容 菓子、食品の製造および販売
◆資本金 77億73百万円

◆従業員数 4,977人
◆売上高 284,048百万円
◆経常利益 10,600百万円
(平成23年3月末現在)


このデータから、グリコは歴史ある優良な企業であることが分かる。数々のヒット商品を世に送り出し、長年お菓子業界を牽引してきた実績もあり、消費者に安心感を持たれ、ブランドも構築されている。ここまで大きくなった場合のリスクとして、組織の硬直化があるが、今回の記事の施策を実現した経緯から想像すると無いと考えられる。


今回の施策の内容は、リフレッシュボックスという箱をオフィスにおき、10種類の24個のお菓子が入っていて、全て1個100円で販売している。1週間に1回ぐらい、グリコのスタッフがオフィスを訪問し、3段ある内の1段分の商品を新しい商品に入れ替える。訪問した際に、リクエストをヒアリングし、商品陳列に反映させている。リフレッシュボックスには冷蔵や冷凍の機能があるものもあり、アイスクリームや氷系も蓄蔵できる。


これまではコンビニエンスに行き、同じ類のお菓子を購入する傾向が高かった。この施策により本来コンビニエンスで購入していたのが、オフィスでの購入に代替したと考えられる。以下はコンビニエンスと比較した場合のメリットを4Pにプロットしてみた。

.<プロダクト>
●品揃えのカスタマイズができる!
コンビニエンスでは、店舗における売れ筋を陳列するため、一定割合のセグメントの品揃えニーズには答えられていない。しかし、リフレッシュボックスは、定期的にリクエストを聞き、反映させているため、コンビニエンスよりも一定割合以上の期待に答えている。

<プライス>
●直販だからできる100円!
メーカーからすればコンビニエンスは、いわば販売代理店であり利益をシェアしている。したがって商品単位での利幅は直販に比べ小さい。加えてコンビニエンスは、一つのショップブランドだけでも数万店舗あるため、ボリュームインパクトを縦に、メーカーへ強い交渉ができる。したがって更に利幅を失う。しかし直販は、飲料メーカーにおける自販機チャネルに似て利幅が大きいため、100円での販売を可能にしている。

<プレイス>
●移動時間はゼロ!
午後中あたりの休憩時間にOLがコンビニエンスに足を運ぶシーンは定番だ。ビル中のオフィスだと、エレベータを待ったりなど、けっこうな時間がかかる。オフィスで購入できれば、外に出る必要がなく、休憩時間を有効に使える。

<プロモーション>
●低コストでメーカー独自の販促ができる!
コンビニエンスが絡む場合は、販売促進の内容を制限されたり、店舗スタッフの意識も低いし、競合もいるため、かなり結果をコントロールしにくい。オフィスの場合は逆で、ある意味オフィスを独占でき、直販スタッフのモチベーションを保ちやすく、結果をコントロールしやすい。


もちろんデメリットもいくつかある。一つはリフレッシュボックスを設置できるまでに時間がかかること。経営者や管理職の考え方で成否が決まる傾向が高いし、社内規定上できないところもあると思う。コンビニエンスのような集客力のあるところにお菓子を供給すれば勝手に売れていくシステムとは違う。


もう一つは、この施策への参入が比較的容易なため、競争環境が激しくなる可能性を秘めている。グリコほどの品揃えを持っているお菓子メーカーは少ないが、営業兼納品を行える1社を多メーカの間にかませることができれば参入はできる。


グリコがこのような施策を行っていると聞いて、ビジネスの面白さを痛感した。どこに着眼するかで、アウトプットは全く違うものになる。薬の置き箱の発想を適用するに至った経緯に強い関心を抱いてしまう。よく発想の転換が必要というけれど、実際はなかなか難しく、組織文化自体に問題があれば尚難しい。

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